2018年3月28日水曜日

平成29年度宅建試験〔相続〕から(5)遺産分割の当事者②


2 胎児・行方不明者の扱い
 前回は、遺産分割の当事者についてみてきました。法定相続人はもちろん、包括受遺者、相続分の譲受人、遺言執行者が遺産分割の当事者でした。

 ところが、当事者の一部が、遺産分割協議に参加できないという場合も考えられます。たとえば、胎児がいる場合、あるいは相続人の一部が行方不明・生存不明になっているような場合です。

 では、胎児や行方不明・生存不明の者はどのように扱われるのでしょうか?

(1)相続人の一部が行方不明の場合
この場合、まず、家庭裁判所に不在者の財産管理人を選任してもらう必要があります(民法25条1項)。そのうえで、この管理人と他の共同相続人との間で遺産分割協議をおこなうという流れになります。

もっとも不在者の財産管理人は、財産の保存行為および権利の性質を変えない限度の利用・改良行為しかできません。遺産分割協議は財産処分の側面があるので、そのままでは不在者の財産管理人としての権限を越えてしまいます。

この点について民法28条は、つぎのように規定しています。

【民法28条】(管理人の権限)
管理人は、第百三条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。不在者の生死が明らかでない場合において、その管理人が不在者が定めた権限を超える行為を必要とするときも、同様とする。

すなわち不在者の財産管理人が遺産分割協議に参加するためには、家庭裁判所の許可を得る必要があるということです。

 (2)相続人のなかに胎児がいる場合
 まず、そもそも胎児が相続人になるか?という点について、民法886条はつぎのように規定してます。

【民法886条】(相続に関する胎児の権利能力)
第1項 胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
第2項 前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。

 このように相続開始時に胎児であっても、相続関係においては「出生したもの」とみなしています。つまり胎児も相続人になるワケです。

 では、遺産分割協議において胎児の相続権は、どのように確保すべきでしょうか?相続が開始したものの、胎児が未だ出生していないという状況の下で、遺産分割協議をどのように進めるべきでしょうか?

 この点、胎児を除く他の共同相続人間での分割を許し、胎児の出生後は、死後認知を受けた者に関する民法910条を類推適用して価額のみの支払請求を認めるべきとする見解があります。

 まず民法910条をみてみましょう。

 【民法910条】(相続の開始後に認知された者の価額の支払請求権)
相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払の請求権を有する。

この規定は、遺言による死後認知(民法781条1項)や父の死後の認知の訴え(民法787条)によって、被認知者が相続人になった場合に関するものです。同条が想定してるのは、つぎのような場面です。

死後認知を受けて相続人となった人がいました。ところが他の共同相続人によって、すでに遺産分割がおこなわれていたとします。この場合、被認知者はもう何ももらえなくなってしまうのでしょうか?

もし、何ももらえないとすると、非嫡出子の保護が不十分になります。しかし、いったん終了した遺産分割を再度やり直すのも大変です。

そこで民法は、910条で遺産分割の安定と非嫡出子の保護の調和を図ろうとしているのです。この規定により、遺産分割後に認知された非嫡出子には価額の償還請求が認められています。すなわち、自分が受けられるはずだった相続分に相当する額のお金を請求できるというワケです。

前記見解は、この規定を胎児の場合にも適用して処理しようというワケです。

しかし、この見解によると胎児が出生する前に遺産分割がすでに終了してしまうのですから、実際には胎児の権利が保護されないおそれがあります。

そこで、出生するまでは遺産分割協議をすることができないと解するのが通説的見解です。胎児が生きて生まれた場合は相続人になること、分割の実行までに時間がかかるのに対し胎児の出生時期はあらかじめ想定できることなどがその理由とされています。

3 当事者の一部を除外した分割協議
ここまで、どのような人が遺産分割協議の当事者になるのかについて検討してきました。胎児や行方不明者がいる場合など他の共同相続人にとっては面倒くさいカンジです。

「もう、いいじゃん!そんなの無視して、分割しようゼ。」という相続人もいるかもしれません。

しかし、遺産分割の当事者にあたる人を除外しておこなわれた遺産分割協議は無効です。結局、遺産分割をやり直さなければならないということです。

相続人のなかに胎児や行方不明者がいるような場合、忍耐が必要になるかもしれません。

4 ケースの遺産分割協議の当事者は誰か?
さて、【ケース2】では、共同相続人BCが遺産分割協議をおこなうことになります。ところが、分割協議が成立する前にBが死亡しています。

この場合、Bが受ける筈だった法定相続分はBの配偶者D、Bの子Eがそれぞれ相続します。このためAの相続について、DEが新たに遺産分割の当事者になります。

したがって、ケースの遺産分割の当事者はCDEの三人です。



なお、本ケースの素材となった平成29年宅建試験第6問の選択肢2は、「Eが代襲相続人として」とあります。

では本問のEは、代襲相続人でしょうか?

代襲相続が生じるのは、BがAよりも先に死亡していた場面です。

しかし、本問のBはAの相続開始時には生存しています。すると本問のEは、代襲相続人ではありません。

したがって、同選択肢の記述はこの点で誤りです。

 次回は、平成29年度宅建試験第6問選択肢3を素材とした、【ケース3】の検討に取りかかります。

2018年3月25日日曜日

平成29年度宅建試験〔相続〕から(4)遺産分割の当事者①


五 遺産分割の当事者

今回は、平成29年度宅建試験第6問選択肢2を素材として、遺産分割の当事者というテーマについてみていきたいと思います。

まず、つぎのケースをみてください。

【ケース2】
Aが死亡し、BCの二人が相続人となった。ところがBとCとの間の遺産分割協議が成立しないうちにBが死亡した。Bに配偶者Dと子Eがいる場合、Aの相続について遺産分割協議の当事者は誰か?

誰が相続人になるか、どれだけの割合で相続するかが決まっていても、相続に関するはなしはそれで終わりではありません。たとえば、相続財産に土地・建物、預貯金がある場合、これらの相続財産の2分の1を相続することが決まっていたとしても、どのように分割するかがただちに決まるわけではありません。

すべての相続財産を換金して分割するのか、あるいは土地・建物の現物を分割するのか、具体的な分割方法を決める必要があります。

これが、遺産分割です。遺産分割について民法は、906条~914条までにルールをおいています。では遺産分割は、誰がどのようにしておこなうのでしょうか?

ここで、民法907条をみてください。

【民法907条】(遺産の分割の協議又は審判等)
第1項 共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の分割をすることができる。
第2項 遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができる。
第3項 前項の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができる。

 つまり、相続人が数人存在する場合(「共同相続」という)、原則として共同相続人の間で協議によって遺産の分割をすることになります。これを遺産分割協議といいます。

 1 遺産分割協議の当事者
 では、どのような人なら遺産分割協議に参加できるのでしょうか?

 この点、民法907条は「共同相続人は…」と規定していますから、法定相続人全員が遺産分割協議の当事者になります。

 では、相続人ではないけれども相続財産について利害関係を有する者はどうでしょうか?たとえば、受遺者、相続分の譲受人、遺言執行者、相続債権者、相続人の債権者は遺産分割協議の当事者になるでしょうか?

 以下、順にみていくことにしましょう。

 (1)受遺者
 受遺者というのは、遺言によって無償で財産的利益を得る者をいいます。

これには、遺産中の特定の財産を与えられる「特定受遺者」と遺産の全部または一定の割合で示された部分を与えられている「包括受遺者」があります。なお、受遺者=相続人とは限りません。まったく血縁関係の無い人に、遺言で財産を与える場合もあるからです。

 たとえば、遺言で「建物甲を与える」とされていれば、遺言によって建物甲を与えられる者は特定受遺者です。そうではなく、遺言で「株式の40%を与える」とされている場合、遺言によって40%の株式を与えられる者は包括受遺者になります。

 以上の受遺者のうち、包括受遺者の扱いについて民法ではつぎのような規定をおいています。

 【民法990条】(包括受遺者の権利義務)
包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。

 つまり、包括受遺者と相続人を同じに扱うということです。では、なぜ両者を同じに扱うのでしょうか?

包括受遺者が承継する権利義務も法定相続人が承継する権利義務も、何パーセント・何割・何分の一というような抽象的な割合のかたちで示されているにすぎません。このため個別の財産が具体的に誰に移転するかは、遺産分割をしなければ明らかにならないのです。

これに対して、特定受遺者に与えられる財産は共同相続の目的財産から除外されます。遺産分割をしなくても与えられる財産を確定できるので、遺産分割の当事者に含める必要はないというワケです。




(2)相続分の譲受人
相続分の譲受人は、通常、遺産分割の当事者になるとされています。

(3)遺言執行者
遺言執行者というのは、遺言内容を相続人自身が執行すると公正な執行が期待できない場合に、遺言執行の目的のために特に選任された者です。遺言執行者は遺言処分の目的である財産について管理権・処分権を有しています。民法1012条をみてください。

【民法1012条】(遺言執行者の権利義務)
第1項 遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
第2項 第六百四十四条から第六百四十七条まで及び第六百五十条の規定は、遺言執行者について準用する。

 「相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為」をする権限があるとされています。そしてこの権限のなかには、遺産分割協議も含まれると説明されることが多いようです。もっとも遺言執行者の遺産分割協議への参加が必要かどうかは、遺言の内容によるというべきでしょう。

 (4)相続債権者および相続人の債権者
 相続債権者および相続人の債権者は、遺産分割前であっても各相続人が個々の相続財産に有する相続持分に対して強制執行することが可能です。このため、遺産分割協議の当事者と扱う必要はありません。

 次回は、遺産分割協議の当事者の一部が、協議に参加できない場合の扱いについて検討します。

2018年3月20日火曜日

平成29年度宅建試験〔相続〕から(3)法定相続分



はじめに

 現在検討中の【ケース1】を、確認しておきましょう。

【ケース1】〔選択肢1〕
Aが死亡し、BCの二人が相続人となった。ここで、①BがAの配偶者でCがAの子である場合と、②BとCがいずれもAの子である場合とで、Bの法定相続分に違いはあるか?

相続人Bが、第一順位の相続人であった場合と、配偶者であった場合とで法定相続分に違いがあるかという問題です。そして前回は、まず①②いずれも場合も、Bが相続人になるかどうかを確認しました。

今回のテーマは、法定相続分です。

2 法定相続分
相続人であるかどうかを明らかしても、それだけでは十分ではありません。つぎに問題になるのは、各相続人の法定相続分です。民法900条をみてください。

【民法900条】(法定相続分)
同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
一  子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
二  配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
三  配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
四  子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。

同条1号によれば、子と配偶者が相続人になる場合は、各二分の一とされています。
つぎに、配偶者と第二順位の相続人(直系尊属)の場合は、同条2号です。


最後に、配偶者と第三順位の相続人(被相続人の兄弟姉妹)の場合は、同条3号です。



まず、【ケース1】①の場合、すなわち配偶者と子が相続人になる場合については、900条1号で規定されていました。それによると、子の相続分および配偶者の法定相続分は各2分の1です。

この規定から、BCの法定相続分は2分の1ずつということになります。したがって、配偶者Bの法定相続分は2分の1です。

つぎに【ケース1】②の場合、すなわち子が数人ある場合については900条4号で規定されています。それによると、各自の相続分は相等しいものになるとされています。つまり、子の数で頭割りするワケです。

この規定から、BCの法定相続分はこの場合も2分の1ずつということになります。したがって、子Bの法定相続分は、この場合も2分の1です。

以上の検討から、【ケース1】①②いずれの場合も、Bの法定相続分に差はないということになります。試験問題の選択肢1の記述は「①の方が大きい」となっていました。そうすると、ここまでの検討から分かるように、試験問題の選択肢1は誤った記述です。

ところで、前回登場した代襲相続があった場合、代襲相続人の法定相続分はどのようになるのでしょうか?つぎの例題で考えてみましょう。

【例題】
Aが死亡して相続が開始した。Aの相続人CDEの法定相続分に関する記述として、民法の規定及び判例によれば正しいものはどれか。
①CがAの子で、DEはAの子Bを代襲したものである場合、その法定相続分は各3分の1になる。
②CがAの子で、DEはAの子Bを代襲したものである場合、その法定相続分はCが2分の1、DEは各4分の1になる。



 この例題のような場合、代襲相続人の法定相続分は相等しいものになるのでしょうか?それとも、それとは異なる法定相続分になるのでしょうか?

この点につき、民法901条はつぎのように定めています。

【民法901条】(代襲相続人の相続分)
第1項 第八百八十七条第二項又は第三項の規定により相続人となる直系卑属の相続分は、その直系尊属が受けるべきであったものと同じとする。ただし、直系卑属が数人あるときは、その各自の直系尊属が受けるべきであった部分について、前条の規定に従ってその相続分を定める。
第2項 前項の規定は、第八百八十九条第二項の規定により兄弟姉妹の子が相続人となる場合について準用する。

つまり代襲相続人の相続分は「その直系尊属が受けるべきであったものと同じ」、すなわち被代襲者の相続分になります。

そして【例題】のように代襲相続人が数人あるときは、「各自の直系尊属が受けるべきであった部分について、前条の規定に従ってその相続分を定める」とされています。

【例題】でいえば、DEの直系尊属Bが受けるべきであった部分(2分の1)について、民法900条の規定にしたがって相続分を定めます。DEはいずれもBの子ですから、DEの法定相続分は相等しいものになります。

つまり、もしAの相続開始時にBが生存していたのであれば、BCで各2分の1の法定相続分になります。しかし【例題】では、BはAよりも先に死亡しておりDEがBを代襲しました。このためBが受ける筈だった2分の1の法定相続分をBの子DEが代襲相続することになります。そして、民法900条4号の規定からDEが受ける法定相続分は相等しいのですから、2分の1×2分の1=4分の1となります。




したがって、【例題】は②が正解ということになります。代襲相続人が数人いる場合、法定相続分は単純な頭割りにならないことに注意してください。

ようやく【ケース1】の検討を終えました。次回は、【ケース2】の検討に取りかかりたいと思います。

2018年3月9日金曜日

平成29年度宅建試験〔相続〕から(2)―【ケース1】の検討



四 相続人と法定相続分

 
では、【ケース1】をみてください。

【ケース1】〔選択肢1〕
 Aが死亡し、BCの二人が相続人となった。ここで、①BがAの配偶者でCがAの子である場合と、②BとCがいずれもAの子である場合とで、Bの法定相続分に違いはあるか?

 ケースでは、Aの相続人BがAの配偶者でCがAの子であった場合と、BCがいずれもAの子であった場合におけるB法定相続分が問われています。

 1 相続人
 まず、Aの相続においてBCが相続人になるかどうかを確認します。というのも、相続人にならなければ当然、法定相続分もないからです。そこで、ケースの登場人物が相続人になるかどうか確認する必要があるというワケです。

 (1)被相続人の子
 ①②のいずれの場合にもAの子とされているCが相続人になることは、すでに「知ってるよ!」という人も多いと思います。この点、民法887条はつぎのように規定しています。

 【民法887条】(子及びその代襲者等の相続権)
第1項 被相続人の子は、相続人となる。
第2項 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
第3項 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。

 ケースのCが相続人となる根拠は、被相続人の子は相続人となると規定している第1項です。この規定から、Aの子Cは①②のいずれも場合も相続人になります。②の場合のBも同様です。

 (2)配偶者
 では、①の場合の配偶者についてはどうでしょうか?民法890条をみてください。

【民法890条】(配偶者の相続権)
被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第八百八十七条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。

この規定から、配偶者も相続人になります。

配偶者に相続権が認められているのは、つぎの二点が根拠だとされています。

(a)婚姻中の財産の清算
名義上、相続人が単独の権利者になっていた財産であっても、その取得・維持に生存配偶者が協力している場合が多く、被相続人の財産に対し潜在的持分を有していると考えられています。その清算のために配偶者相続権が認められているというワケです。

(b)生存配偶者の生活保障
被相続人の収入に依存して生活してきた場合、被相続人が生きていれば配偶者は扶養を受けられた筈です。しかし被相続人の死亡によって、これを失います。その代わりとして、生存配偶者に相続権が認められていると説明されることがあります。

ただし、民法890条の「配偶者」とは、法律婚配偶者に限定されることに注意してください。法律婚というのは、ようするに婚姻届出をした場合をいいます。婚姻の合意はあるけれど、婚姻届は未だ役所に提出・受理されていないのであれば法律婚関係は存在しないことになります。

以上のことから、ケース①の場合の配偶者も相続人になります。

(3)相続の順位
なお、ケースでは直接問題になっていませんが、相続順位についてもここで整理しておきましょう。

 1)血族相続人と配偶者相続人
まず、相続人とひとくちに言っても、大きく二つに分けられます。ひとつが血族相続人、もうひとつが配偶者相続人です。

このうち血族相続人は被相続人(故人)との関係により、第一順位から第三順位までの序列があります。この順位は、相続の優先順位です。第一順位の相続人がいる場合、第二順位、第三順位の相続人にあたる人には、「相続のオハチ」は回ってきません。第一順位の相続人がいない場合に、第二順位の相続人が、第一順位も第二順位の相続人もいない場合に第三順位の相続人が相続します。

そして、配偶者相続人は、さきに民法890条でみたように、他にどんな相続人がいようとも常に相続人になります。

 2)第一順位の相続人
第一順位の相続人にあたる人は、被相続人の子です。さきにみた民法887条1項に規定されていました。

では、被相続人の子が相続開始以前に死亡していた場合は、どうなるのでしょうか?あるいは、親不孝が過ぎて、被相続人によって相続人から廃除(892条)されていたり、相続欠格事由に該当した場合はどうなるのでしょうか?

これらの場合、Aの子(被相続人からみて孫にあたる)が存在すれば、その者がAに代わって(代襲して)相続人になります。これを代襲相続といいます。この代襲相続人も第一順位の相続人です。民法887条2項です。

さらに、この代襲者までも相続開始以前に死亡していたら、どうなるのでしょうか?

この場合でも代襲者に子が存在すれば、その子がさらに代襲します。再代襲といいます。民法887条3項です。この再代襲者も第一順位の相続人です。

ようするに被相続人の直系卑属(被相続人の直系血族で、かつ下の世代の血族)が、第一順位の相続人になるということです。

 3)第二順位の相続人
さて、以上の第一順位の相続人が誰もいない場合、第二順位の相続人が相続することになります。民法889条1項1号をみてください。

【民法889条】(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)
第1項 次に掲げる者は、第八百八十七条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
一  被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
二  被相続人の兄弟姉妹
第2項 第八百八十七条第二項の規定は、前項第二号の場合について準用する。

この条文は、相続の順位を規定するとともに、第二順位以下の相続人の範囲を定めたものです。

第二順位の相続人にあたる人は、被相続人の直系尊属です。直系尊属というのは、直系かつ世代が上の血族の人です。すなわち、被相続人の父母、父母が先に死亡しているが祖父母がご存命ならば祖父母が相続することになるワケです。

  4)第三順位の相続人
 第一順位の相続人も第二順位の相続人も存在しない場合、第三順位の相続人が相続します。

 第三順位の相続人にあたる人は、被相続人の兄弟姉妹です(民法889条1項2号)。

 では、第一順位の相続人も第二順位の相続人も存在せず、かつ相続開始以前に、被相続人の兄弟姉妹が死亡していたらどうなるのでしょうか?

この場合について規定しているのが、民法889条2項です。この規定により、被相続人の兄弟姉妹の子が代襲相続します。つまり、被相続人の「おい・めい」も相続人になる場合があるということです。

さらに、この代襲者までも相続開始以前に死亡していたら、どうなるのでしょうか?

第一順位の相続人については、再代襲というのがありました。そうすると、この場面でも被相続人のおい・めいに子が存在すれば、おい・めいの子が相続人になりそうです。

しかし、第三順位の相続人については、再代襲はありません。

民法890条は、2項で代襲相続の規定(民法887条2項)を第三順位の相続人について準用していますが、再代襲の規定(民法887条3項)については準用すると規定していないからです。準用する旨の条文が存在しないので、第三順位の相続人について再代襲はない趣旨だと解釈するのです。

この場面で再代襲を認めない理由は、生前、被相続人との生活関係が希薄な者にまで相続人の範囲を拡大すると相続関係が複雑になるほか、「笑う相続人」の出現を防ぐためだとされています。

次回は、ひきつづき【ケース1】に関し、法定相続分を検討していきましょう。

2018年3月8日木曜日

平成29年度宅建試験〔相続〕から(1)



一 はじめに

「講義と研究と100円コーヒー」へようこそ。
 さて、今回は、平成29年度宅建試験第6問を素材として、基礎知識の確認や判例の分析をしてみたいと思います。この問題は、相続がテーマになっています。閲覧可能であれば「法律学講義録」のなかの「相続と法講義録」もあわせてご覧ください。

二 平成29年宅建試験第6問

 まずは、試験問題をみてみましょう。

Aが死亡し、相続人がBとCの2名であった場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1 ①BがAの配偶者でCがAの子である場合と、②BとCがいずれもAの子である場合とでは、Bの法定相続分は①の方が大きい。
2 Aの死亡後、いずれもAの子であるBとCとの間の遺産分割協議が成立しないうちにBが死亡したときは、Bに配偶者Dと子Eがいる場合であっても、Aの遺産分割についてはEが代襲相続人として分割協議を行う。
3 遺産分割協議が成立するまでの間に遺産である不動産から賃料債権が生じていて、BとCがその相続分に応じて当該賃料債権を分割単独債権として確定的に取得している場合、遺産分割協議で当該不動産をBが取得することになっても、Cが既に取得した賃料債権につき清算する必要はない。
4 Bが自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所に対して、相続によって得た財産の限度においてのみAの債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して相続を承認する限定承認をする旨を申述すれば、Cも限定承認をする旨を申述したとみなされる。

相続のところは、まったく勉強しないで試験に臨む人もいるかもしれませんね。あるいは過去問をひととおり解いて対策する人もいるかもしれません。

けれども、相続というライフイベントは多くの人が経験するものです。自分の親兄弟などがお亡くなりになった場面ですから、「勉強しておいてよかった!」とはいえません。ただ、相続のさいの精神的負担は、知識が無い場合よりも少なくなると思います。

試験との関係では、基本事項をおさえておけば、問題自体は、それほど難しくないようです。勉強しておけば確実に得点可能です。

各選択肢をみると、選択肢1は相続分、選択肢2は遺産分割の当事者、選択肢3は遺産分割の対象、選択肢4は限定承認の申述について、それぞれ条文・判例等の知識が問われています。

さて、多くの過去問集では、ここから選択肢の順に「正しい」とか「誤り」として解説をつけていくものが多いと思います。

しかし、このブログは、べつに資格試験対策を掲げていませんし、試験問題の解説をするためのものでもありません。問題等を素材として、講義ノートの形式にアレンジし解説していこうと考えています。

まさに、ムダに掘り下げることが目的なのです。


三 「ケース」のかたちにアレンジ

そこで、上記の問題を選択肢ごとに「ケース」のかたちにアレンジし、検討していきたいと思います。

 【ケース1】〔選択肢1〕
 Aが死亡し、BCの二人が相続人となった。ここで、①BがAの配偶者でCがAの子である場合と、②BとCがいずれもAの子である場合とで、Bの法定相続分に違いはあるか?

 【ケース2】〔選択肢2〕
 Aが死亡し、BCの二人が相続人となった。ところがBとCとの間の遺産分割協議が成立しないうちにBが死亡した。Bに配偶者Dと子Eがいる場合、Aの相続について遺産分割協議の当事者は誰か?

 【ケース3】〔選択肢3〕
 Aが死亡し、BCの二人が相続人となった。BCの遺産分割協議が成立するまでの間に遺産である不動産から賃料債権が生じ、BとCがその相続分に応じて当該賃料債権を分割単独債権として確定的に取得した。遺産分割協議で当該不動産をBが取得した場合、Cは既に取得した賃料債権を清算する必要はあるか?

 【ケース4】〔選択肢4〕
 Aが死亡し、BCの二人が相続人となった。Bが自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所に対して、相続によって得た財産の限度においてのみAの債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して相続を承認する限定承認をする旨を申述した。この場合、Cも限定承認をしたものとみなされるか?

 できるだけ選択肢の文章を生かした設問形式にしてみました。これで準備完了です。ここからは、順に上記ケースを検討していきます。

次回は【ケース1】について考えてみましょう。