五 遺産分割の当事者
今回は、平成29年度宅建試験第6問選択肢2を素材として、遺産分割の当事者というテーマについてみていきたいと思います。
まず、つぎのケースをみてください。
【ケース2】
Aが死亡し、BCの二人が相続人となった。ところがBとCとの間の遺産分割協議が成立しないうちにBが死亡した。Bに配偶者Dと子Eがいる場合、Aの相続について遺産分割協議の当事者は誰か?
誰が相続人になるか、どれだけの割合で相続するかが決まっていても、相続に関するはなしはそれで終わりではありません。たとえば、相続財産に土地・建物、預貯金がある場合、これらの相続財産の2分の1を相続することが決まっていたとしても、どのように分割するかがただちに決まるわけではありません。
すべての相続財産を換金して分割するのか、あるいは土地・建物の現物を分割するのか、具体的な分割方法を決める必要があります。
これが、遺産分割です。遺産分割について民法は、906条~914条までにルールをおいています。では遺産分割は、誰がどのようにしておこなうのでしょうか?
ここで、民法907条をみてください。
【民法907条】(遺産の分割の協議又は審判等)
第1項 共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の分割をすることができる。
第2項 遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができる。
第3項 前項の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができる。
つまり、相続人が数人存在する場合(「共同相続」という)、原則として共同相続人の間で協議によって遺産の分割をすることになります。これを遺産分割協議といいます。
1 遺産分割協議の当事者
では、どのような人なら遺産分割協議に参加できるのでしょうか?
この点、民法907条は「共同相続人は…」と規定していますから、法定相続人全員が遺産分割協議の当事者になります。
では、相続人ではないけれども相続財産について利害関係を有する者はどうでしょうか?たとえば、受遺者、相続分の譲受人、遺言執行者、相続債権者、相続人の債権者は遺産分割協議の当事者になるでしょうか?
以下、順にみていくことにしましょう。
(1)受遺者
受遺者というのは、遺言によって無償で財産的利益を得る者をいいます。
これには、遺産中の特定の財産を与えられる「特定受遺者」と遺産の全部または一定の割合で示された部分を与えられている「包括受遺者」があります。なお、受遺者=相続人とは限りません。まったく血縁関係の無い人に、遺言で財産を与える場合もあるからです。
たとえば、遺言で「建物甲を与える」とされていれば、遺言によって建物甲を与えられる者は特定受遺者です。そうではなく、遺言で「株式の40%を与える」とされている場合、遺言によって40%の株式を与えられる者は包括受遺者になります。
以上の受遺者のうち、包括受遺者の扱いについて民法ではつぎのような規定をおいています。
【民法990条】(包括受遺者の権利義務)
包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。
つまり、包括受遺者と相続人を同じに扱うということです。では、なぜ両者を同じに扱うのでしょうか?
包括受遺者が承継する権利義務も法定相続人が承継する権利義務も、何パーセント・何割・何分の一というような抽象的な割合のかたちで示されているにすぎません。このため個別の財産が具体的に誰に移転するかは、遺産分割をしなければ明らかにならないのです。
(2)相続分の譲受人
相続分の譲受人は、通常、遺産分割の当事者になるとされています。
(3)遺言執行者
遺言執行者というのは、遺言内容を相続人自身が執行すると公正な執行が期待できない場合に、遺言執行の目的のために特に選任された者です。遺言執行者は遺言処分の目的である財産について管理権・処分権を有しています。民法1012条をみてください。
【民法1012条】(遺言執行者の権利義務)
第1項 遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
第2項 第六百四十四条から第六百四十七条まで及び第六百五十条の規定は、遺言執行者について準用する。
「相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為」をする権限があるとされています。そしてこの権限のなかには、遺産分割協議も含まれると説明されることが多いようです。もっとも遺言執行者の遺産分割協議への参加が必要かどうかは、遺言の内容によるというべきでしょう。
(4)相続債権者および相続人の債権者
相続債権者および相続人の債権者は、遺産分割前であっても各相続人が個々の相続財産に有する相続持分に対して強制執行することが可能です。このため、遺産分割協議の当事者と扱う必要はありません。
