2018年3月9日金曜日

平成29年度宅建試験〔相続〕から(2)―【ケース1】の検討



四 相続人と法定相続分

 
では、【ケース1】をみてください。

【ケース1】〔選択肢1〕
 Aが死亡し、BCの二人が相続人となった。ここで、①BがAの配偶者でCがAの子である場合と、②BとCがいずれもAの子である場合とで、Bの法定相続分に違いはあるか?

 ケースでは、Aの相続人BがAの配偶者でCがAの子であった場合と、BCがいずれもAの子であった場合におけるB法定相続分が問われています。

 1 相続人
 まず、Aの相続においてBCが相続人になるかどうかを確認します。というのも、相続人にならなければ当然、法定相続分もないからです。そこで、ケースの登場人物が相続人になるかどうか確認する必要があるというワケです。

 (1)被相続人の子
 ①②のいずれの場合にもAの子とされているCが相続人になることは、すでに「知ってるよ!」という人も多いと思います。この点、民法887条はつぎのように規定しています。

 【民法887条】(子及びその代襲者等の相続権)
第1項 被相続人の子は、相続人となる。
第2項 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
第3項 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。

 ケースのCが相続人となる根拠は、被相続人の子は相続人となると規定している第1項です。この規定から、Aの子Cは①②のいずれも場合も相続人になります。②の場合のBも同様です。

 (2)配偶者
 では、①の場合の配偶者についてはどうでしょうか?民法890条をみてください。

【民法890条】(配偶者の相続権)
被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第八百八十七条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。

この規定から、配偶者も相続人になります。

配偶者に相続権が認められているのは、つぎの二点が根拠だとされています。

(a)婚姻中の財産の清算
名義上、相続人が単独の権利者になっていた財産であっても、その取得・維持に生存配偶者が協力している場合が多く、被相続人の財産に対し潜在的持分を有していると考えられています。その清算のために配偶者相続権が認められているというワケです。

(b)生存配偶者の生活保障
被相続人の収入に依存して生活してきた場合、被相続人が生きていれば配偶者は扶養を受けられた筈です。しかし被相続人の死亡によって、これを失います。その代わりとして、生存配偶者に相続権が認められていると説明されることがあります。

ただし、民法890条の「配偶者」とは、法律婚配偶者に限定されることに注意してください。法律婚というのは、ようするに婚姻届出をした場合をいいます。婚姻の合意はあるけれど、婚姻届は未だ役所に提出・受理されていないのであれば法律婚関係は存在しないことになります。

以上のことから、ケース①の場合の配偶者も相続人になります。

(3)相続の順位
なお、ケースでは直接問題になっていませんが、相続順位についてもここで整理しておきましょう。

 1)血族相続人と配偶者相続人
まず、相続人とひとくちに言っても、大きく二つに分けられます。ひとつが血族相続人、もうひとつが配偶者相続人です。

このうち血族相続人は被相続人(故人)との関係により、第一順位から第三順位までの序列があります。この順位は、相続の優先順位です。第一順位の相続人がいる場合、第二順位、第三順位の相続人にあたる人には、「相続のオハチ」は回ってきません。第一順位の相続人がいない場合に、第二順位の相続人が、第一順位も第二順位の相続人もいない場合に第三順位の相続人が相続します。

そして、配偶者相続人は、さきに民法890条でみたように、他にどんな相続人がいようとも常に相続人になります。

 2)第一順位の相続人
第一順位の相続人にあたる人は、被相続人の子です。さきにみた民法887条1項に規定されていました。

では、被相続人の子が相続開始以前に死亡していた場合は、どうなるのでしょうか?あるいは、親不孝が過ぎて、被相続人によって相続人から廃除(892条)されていたり、相続欠格事由に該当した場合はどうなるのでしょうか?

これらの場合、Aの子(被相続人からみて孫にあたる)が存在すれば、その者がAに代わって(代襲して)相続人になります。これを代襲相続といいます。この代襲相続人も第一順位の相続人です。民法887条2項です。

さらに、この代襲者までも相続開始以前に死亡していたら、どうなるのでしょうか?

この場合でも代襲者に子が存在すれば、その子がさらに代襲します。再代襲といいます。民法887条3項です。この再代襲者も第一順位の相続人です。

ようするに被相続人の直系卑属(被相続人の直系血族で、かつ下の世代の血族)が、第一順位の相続人になるということです。

 3)第二順位の相続人
さて、以上の第一順位の相続人が誰もいない場合、第二順位の相続人が相続することになります。民法889条1項1号をみてください。

【民法889条】(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)
第1項 次に掲げる者は、第八百八十七条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
一  被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
二  被相続人の兄弟姉妹
第2項 第八百八十七条第二項の規定は、前項第二号の場合について準用する。

この条文は、相続の順位を規定するとともに、第二順位以下の相続人の範囲を定めたものです。

第二順位の相続人にあたる人は、被相続人の直系尊属です。直系尊属というのは、直系かつ世代が上の血族の人です。すなわち、被相続人の父母、父母が先に死亡しているが祖父母がご存命ならば祖父母が相続することになるワケです。

  4)第三順位の相続人
 第一順位の相続人も第二順位の相続人も存在しない場合、第三順位の相続人が相続します。

 第三順位の相続人にあたる人は、被相続人の兄弟姉妹です(民法889条1項2号)。

 では、第一順位の相続人も第二順位の相続人も存在せず、かつ相続開始以前に、被相続人の兄弟姉妹が死亡していたらどうなるのでしょうか?

この場合について規定しているのが、民法889条2項です。この規定により、被相続人の兄弟姉妹の子が代襲相続します。つまり、被相続人の「おい・めい」も相続人になる場合があるということです。

さらに、この代襲者までも相続開始以前に死亡していたら、どうなるのでしょうか?

第一順位の相続人については、再代襲というのがありました。そうすると、この場面でも被相続人のおい・めいに子が存在すれば、おい・めいの子が相続人になりそうです。

しかし、第三順位の相続人については、再代襲はありません。

民法890条は、2項で代襲相続の規定(民法887条2項)を第三順位の相続人について準用していますが、再代襲の規定(民法887条3項)については準用すると規定していないからです。準用する旨の条文が存在しないので、第三順位の相続人について再代襲はない趣旨だと解釈するのです。

この場面で再代襲を認めない理由は、生前、被相続人との生活関係が希薄な者にまで相続人の範囲を拡大すると相続関係が複雑になるほか、「笑う相続人」の出現を防ぐためだとされています。

次回は、ひきつづき【ケース1】に関し、法定相続分を検討していきましょう。